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連想統合法(点つなぎレトリック)
構成(順序・省略・ドラマ化)

連想統合法(点つなぎレトリック)

本来は別々の出来事・数字・発言なのに、近くに並べたり順番に語ったりするだけで、ひと続きの“性格”や“体質”に見せてしまう見せ方です。 因果は言い切らなくても、点(出来事)を線(物語)に見せることで、読者に「いつも同じ」「やっぱりそうだ」と感じさせます。

📖 詳細解説

人は、近さ(並び)と順番(時系列)から意味をつくるクセがあります。

そこで、過去の小さな出来事や別の場面の話を連続して置くと、読者の頭の中で一本のストーリーができあがります。

問題は「並べること」ではありません。関係の説明がないのに“つながっているように”見せることが問題です。

このレトリックは、個人を一色のキャラに塗ってしまいやすく、出来事の文脈や努力が背景に押しやられる危険があります。


例(よくある3パターン)

① 過去エピソードを足して“性格の連続”にする

記事のテーマ:音楽番組での一言が「自信家」と話題。

読者の本題:今回の発言は何を意味する?

よくある“点つなぎ”:昔の動画→別インタビュー→第三者の噂…を順に並べ、「自己愛キャラ」にまとめる。

どう戻す:それぞれの場面・目的・前提を分けて説明し、今回の発言は今回の文脈(番組演出への敬意など)で読む。

② 作品評価に私生活の話を混ぜて“線”にする

記事のテーマ:映画が高評価。

読者の本題:作品として何が良かった?

よくある“点つなぎ”:主演の恋愛観や過去発言を並べ、「作品にも驕りが見える」と結ぶ。

どう戻す:脚本・演出・演技・観客満足など作品の指標で評価し、私生活の話は別枠に置く。どう影響するかを語るなら道筋を一文で示す。

③ 小トラブルの積み上げで“体質”に見せる

記事のテーマ:番組内の小さなトラブルが複数報じられた。

読者の本題:本当に「体質」と言えるの?

よくある“点つなぎ”:時期も規模も違う事例を並べて「相次ぐ◯◯」とまとめる。

どう戻す:同じ期間・同じ基準で件数や発生率を出して傾向を語る。単発の点は点のままにする。


見分けるコツ

文章に「一連の」「相次ぐ」「〜続き」が増え、過去→今回→別の過去の順でサンドイッチされていたら要注意。

頭の中で本題を一言に固定してから、「この点と点は、どうつながるの?」と自分に問い直すと霧が晴れます。

つなぐ理由が一文で言えないなら、点は点のままに。


憶測の煙の晴らし方

  1. 点を分ける:出来事ごとに場面・目的・前提を一言ずつ。
  2. 線の根拠を確認:本当に影響し合うならどうつながるかを一文で。
  3. 別枠に退避:つながらない点(私生活・昔話など)は別レイヤーへ。

「点は点。線にするなら“どうつながるか”を一文で。」

「今回の発言は番組演出へのコメント。過去の別件は場面も目的も違うため、同じ“性格の証拠”にはしません。」


おまけ:並置誤謬とのちがい(かんたん比較)

  • 並置誤謬:隣に置いただけで関係があるように見せる(器の問題)。
  • 連想統合法:その点を順に並べて“人物像・体質”に仕立てる(物語化の問題)。

    どちらも起点は「並べ方」ですが、連想統合法は“キャラづけ”等まで踏み込むのが特徴です。


まとめ:人は一色じゃない

私たちは、場面ごとに役割も言葉も変わる多面体です。

だから、別々の出来事を並べてひとつの“キャラ”に塗りつぶすと、本当の姿から離れてしまいます。

  • 点は点のまま見ましょう。場面・目的・前提が違えば、同じ人でも意味は変わります。
  • 線にするなら道筋を一文で。「どうつながるのか?」が言えない線は、いったん保留にします。
  • 評価は分けて考える。 作品の良し悪しと、その人の私生活や昔の話は、別のレイヤーで扱います。
  • 結論を急がない。 “いつもそう”と決める前に、条件(指標・期間・規模)をそろえてから比べます。

合言葉:人は一色じゃない。点は点、線にするなら理由を一文で。

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並置誤謬(Juxtaposition Fallacy)

関係が説明されていない2つ以上の情報を“近くに置く”だけで、あたかも因果・同等・連鎖があるように感じさせてしまう構造上の誤りです。 ※重要:並べること自体は悪くありません。 問題は、関係の説明が無いのに“ありそう”に見せてしまうことです。

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対比フレーミング(Contrast Framing)

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