📖 詳細解説
🌫️ 「どちらが上か」「どちらが正しいか」を作り出すニュース構造
芸能報道やワイドショーでよく見られる構成です。
「Number_iは苦戦、一方キンプリは順調」「〇〇が炎上、対して△△は称賛」といった書き方。
読者は「両方の事実を知った気」になりますが、実際は比較という構造そのものが感情を方向づける仕掛けになっています。
SmokeOutでは、このような構成を“相対的印象操作(Relational Impressioning)” の一種として分析します。
🧩 仕組み:文脈を切り出して並べるだけで“物語”が生まれる
典型的な構造はこうです。
Aは◯◯した。一方でBは△△した。 その結果、明暗が分かれた。
- 「AとB」が直接関係していなくても
- 両者を“並列化”するだけで
- 読者は「比較の物語」を自動的に構築してしまう
このとき使われる語彙は決まっています。
「一方」「しかし」「対照的に」「明暗が分かれた」「好対照」など。
これらの接続詞・副詞が、報道の“対立構造”を無意識に強化するトリガーになります。
📜 国際基準との照合
UNESCO報道倫理ガイドライン(2023年版)では次のように述べられています:
“Journalists should avoid presenting issues as binary conflicts when complexity is essential to understanding.”
(理解に複雑さが必要な問題を、単純な対立構造として提示してはならない。)
つまり、「対比」自体は情報整理の技法ですが、それが複雑な現実を“勝敗”や“好感度”で単純化するときに倫理的リスクが生まれます。
⚙️ 構造的リスク:事実よりも“位置関係”が印象に残る
対比フレーミングの怖さは、読者が「Aが悪い」「Bが成功」と自動的に補完してしまうことにあります。
- Aが“沈んで見える”と、Bが“浮いて見える”
- Aが“静か”だと、Bが“華やか”に感じられる
- Aが“苦戦”なら、Bは“快進撃”に見える
本来は独立した出来事同士でも、並べ方ひとつで「勝者と敗者」「明るさと影」が生まれてしまうのです。
🧠 SmokeOut視点:報道が「ライバル」を作り出すとき
この構造は、時に競争を煽り、“どちらのファンが勝っているか”という余計な対立を生み出します。
Number_iとKing & Princeのように、もともと同じグループだった関係を“比較の物語”に仕立てることで、読者の感情を引きつける——そんな構造が繰り返されています。
本来は「違う道を歩んでいる」だけなのに、
報道の並べ方によって「どちらが上か」というゲームに変えられてしまう。
SmokeOutは、この構造を「感情を競わせる報道構文」として分析し、
比較を事実の羅列ではなく構造として読み解くことを提案しています。
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🔗 関連する技法
連想統合法(点つなぎレトリック)
本来は別々の出来事・数字・発言なのに、近くに並べたり順番に語ったりするだけで、ひと続きの“性格”や“体質”に見せてしまう見せ方です。 因果は言い切らなくても、点(出来事)を線(物語)に見せることで、読者に「いつも同じ」「やっぱりそうだ」と感じさせます。
並置誤謬(Juxtaposition Fallacy)
関係が説明されていない2つ以上の情報を“近くに置く”だけで、あたかも因果・同等・連鎖があるように感じさせてしまう構造上の誤りです。 ※重要:並べること自体は悪くありません。 問題は、関係の説明が無いのに“ありそう”に見せてしまうことです。
循環報道(Circular Reporting)
複数のメディアが、同じ未検証情報を互いに引用し合い、信頼性があるように見せてしまう構造。 一次情報が確認されないまま、「複数報道=確度が高い」という錯覚を生む。 報道の連鎖が自己再生し、真偽不明の情報が“事実のように流通”してしまう現象。
分散型メタ物語
複数のメディアが、同時期に類似した内容・論調・構成の記事を発信することで、あたかも「共通の事実」や「社会的な確定情報」であるかのような印象を生み出す現象。 単一記事の誤報や煽動とは異なり、メディア横断的な“空気”によって現実認識が形成される構造的リスクを指す。