📖 詳細解説
🌫️ ニュースがニュースを信じるとき
ある日、ニュースサイトを見ていたら、「複数メディアが報じています」と書かれていた。
でもよく読んでみると、どこも同じ内容。
いったい、最初に誰が言い始めたんだろう?
SmokeOutでは、この現象を「循環報道(Circular Reporting)」と呼びます。
異なるメディアが、同じ未検証情報を互いに引用し合うことで、あたかも“確かな情報”のように見せてしまう構造です。
🧩 仕組み:ニュースがぐるりと一周する
循環報道は、たいていこんな形で生まれます。
- メディアA:「〜と関係者が語った」
- メディアB:「〜と報じられている(出典:A)」
- メディアC:「複数メディアが報じた〜」
そして読者の頭の中では、こう変換されます。
「複数メディアが報じている=信頼できる」
でも、よく見るとどこにも一次情報源は存在しない。
煙が輪を描いて戻ってくるように、ニュースがニュースを信じてしまう構造——
それが循環報道です。
🌐 国際基準が警告する“引用の輪”
UNESCOの報道倫理ハンドブック(2023年版)は、こう述べています:
“Journalists should not reproduce unverified information from other media without independent verification.”
(他メディアの未検証情報を、独自の裏付けなく再生産してはならない。)
つまり、「他社の記事」は“事実”ではなく、検証の出発点にすぎません。
🧠 SmokeOut視点:信頼の輪郭を見抜くために
循環報道は、意図的な捏造ではなく、多くの場合「確認の省略」から生まれます。
けれど、その“省略”こそが、最も静かなリスク。
報道は事実を伝えるために存在します。
けれど、ニュースがニュースを根拠にしはじめた瞬間、事実はどこにもなくなってしまうのです。
誰かが言っていた——を、誰かがまた言う。
その瞬間、ニュースは輪になって、自分を信じ始める。
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🔗 関連する技法
連想統合法(点つなぎレトリック)
本来は別々の出来事・数字・発言なのに、近くに並べたり順番に語ったりするだけで、ひと続きの“性格”や“体質”に見せてしまう見せ方です。 因果は言い切らなくても、点(出来事)を線(物語)に見せることで、読者に「いつも同じ」「やっぱりそうだ」と感じさせます。
並置誤謬(Juxtaposition Fallacy)
関係が説明されていない2つ以上の情報を“近くに置く”だけで、あたかも因果・同等・連鎖があるように感じさせてしまう構造上の誤りです。 ※重要:並べること自体は悪くありません。 問題は、関係の説明が無いのに“ありそう”に見せてしまうことです。
対比フレーミング(Contrast Framing)
二つ以上の人物・組織・出来事を並べ、一方を肯定的に、もう一方を否定的に描くことで、読者の評価を方向づける構成技法。 本来は別々の文脈にあるものを「比較の物語」に変換し、“明暗”“勝敗”“成否”などの感情軸で物語を作る手法。
分散型メタ物語
複数のメディアが、同時期に類似した内容・論調・構成の記事を発信することで、あたかも「共通の事実」や「社会的な確定情報」であるかのような印象を生み出す現象。 単一記事の誤報や煽動とは異なり、メディア横断的な“空気”によって現実認識が形成される構造的リスクを指す。