📖 詳細解説
🤔 よくある批判
「コタツ記事 = 質が低い」
一般的な批判:
現場に行かない → 手抜き → 質が低い
この批判の背景には:
- 取材にコストと時間をかけていない
- ネット情報の寄せ集めに過ぎない
- 一次情報がない
という理解があります。
「確認不足」という批判
よく言われること:
現地に行かないから、確認が不十分 → 事実関係が怪しい
確かに、現場での直接確認には価値があります。
しかし、「確認不足」という批判だけでは、本質を見逃してしまうかもしれません。
💭 SmokeOutの考え方
SmokeOutは、「コタツ」という場所を問題視していません。
なぜなら:
- SNSを丁寧に分析することも、立派な取材
- 公式発表を検証することも、重要な仕事
- データを統計的に処理することも、価値ある調査
- 現地に行っても、不誠実な記事は書けます
問題の本質は「書く場所」ではなく「書き方」です。
では、何が問題なのか?
SmokeOutが問題視するのは、こうした表現技法です:
- 誤読を誘う配置
無関係な2つの情報を並べて、関連があるように見せる - 文脈の切り離し
発言を都合よく切り取って、意味を変えてしまう - 一方的な選択と強調
批判だけ、肯定だけを強調して、全体像を隠す - 記者の意図の不透明化
なぜこの情報を選んだのか、読者には分からない
例えば:こんな記事
タイトル:「俳優A、過去の発言が物議」
本文:
俳優Aさんは数年前、「〇〇も大切だと思う」と発言していた。
SNS上では現在、〇〇をめぐって議論が起きている。
ファンからは「Aさんの思いが伝わる」という声も。
これは何が問題?
- Aさんの発言は数年前の別の文脈でのもの
- 現在のSNSの議論とは本来無関係
- でも並べることで、関連があるように見える
- Aさんが現在の議論に参加しているような印象
これは「コタツ」で書いたから問題なのでしょうか?
違います。
現地取材していても、この配置をすれば同じ問題が起きます。
逆に:こんな記事なら
タイトル:「SNSの〇〇議論を分析」
本文:
現在、SNS上では〇〇について議論が起きている。
編集部は直近72時間にXで関連投稿500件を調査した(検索条件は本文末尾に記載)。
賛成:約300件(60%)
反対:約200件(40%)
主な論点は以下の通り:
・賛成派の理由:△△(約150件で言及)
・反対派の理由:××(約100件で言及)
議論は現在も継続中で、明確な結論は出ていない。
これは何が優れている?
- 調査範囲を明示(500件、期間)
- 全体像を数字で示す
- 一方的でない
- 記者の意図(分析すること)が明確
これもコタツで書けます。でも、誠実な記事です。
🔍 見抜き方のポイント
コタツ記事かどうかより、こう自問してください:
- 配置に違和感はないか?
無関係なものを並べていないか
時系列を無視していないか - 文脈が残っているか?
発言を都合よく切り取っていないか
条件や前提を省略していないか - 全体像が見えるか?
一方的な声だけ強調していないか
数字や割合が示されているか - 記者の意図が分かるか?
なぜこの情報を選んだのか説明があるか
何を伝えたいのか明確か
少しでも違和感があれば、要注意です。
🌈 まとめ
「コタツ記事」という言葉は、多くの人が使っていますが、その意味は様々です。
一般的な理解:
- 現場に行かず、ネット情報だけで書いた記事
- 手抜き、質が低い
SmokeOutの考え方:
- 問題は「場所」ではなく「書き方」
- 誤読を誘う表現技法こそが問題
- コタツでも誠実な記事は書ける
- 現地でも不誠実な記事は書ける
結論:コタツは場所の比喩にすぎない。判断すべきは書き方の誠実さです。
より深く知りたい方へ
SmokeOutでは、こうした不誠実な表現技法を使った記事を「煙幕記事」と呼んでいます。
煙幕記事とは:真実を「煙」で覆い、読者を誤読に導く記事
本当に問題なのは、コタツではなく「煙幕」です。
🔗 関連項目
➡️ 次に読む:[煙幕記事(Smokescreen Journalism)]
💭 SmokeOutからの一言
「コタツ記事」という言葉は便利ですが、問題の本質を隠してしまうこともあります。
現地に行くか、コタツにいるかは、それほど重要ではありません。
大切なのは、読者を誤読させない表現をすること。
それができていない記事——
煙幕は、現地でもコタツでも張れます。
そして煙幕こそが、読者の目を曇らせます。
詳しくは、ぜひ煙幕記事の辞典をご覧ください。
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