5月4日に女性自身が配信した「『1人だけ浮いてる』TWICE・モモ 登壇イベントでのハプニング対応が一部で"態度悪い"と波紋も…擁護の声も多いワケ」を検証します。記事は、JINS RIMアンバサダー就任イベントのフォトコールでパネルの持ち位置に戸惑うMOMOさんの様子を報じ、SNS上の批判3件と擁護3件を引用しながら「波紋」を語ります。検証してみると、本人・所属事務所・JINSへの取材跡はなく、状況の解釈を提供する唯一のソースは「あるWEBメディア記者」という匿名一人。SNS投稿の総数も示されないまま、計6件のツイート引用だけで「波紋」が組み立てられていました。
「波紋」と書きながら、波紋の規模が一度も示されない
記事は冒頭で「ファンの間で波紋を呼んでいて」と書き、後段で「Xで拡散」「一部ファンからは批判的な声」と続けます。
ここで読者が知りたいのは、波紋の実態的な規模です。何件のうちの何件が批判だったのか。
ところが、記事内で具体的に引用されている批判ツイートは3件、擁護ツイートも3件、合計6件。元の投稿が何件あって、そのうち何割が批判で何割が擁護なのかは、記事は一切触れません。
「拡散」と書きながら拡散の規模を示さず、「波紋」と書きながら波紋の輪郭を示さない。読者の頭の中では「炎上に近い騒ぎ」のイメージが立ち上がりますが、そのイメージを支える数値は記事の中にありません。
状況の解釈を提供しているのは、匿名の「WEBメディア記者」一人
記事の中盤に「あるWEBメディア記者は言う」として、状況を解釈する長めのコメントが置かれています。「不機嫌というよりも、どのように動けばよいか戸惑っていたと捉える方が自然でしょう」というのが、その記者の見立てです。
ここで気になるのは、コメントの中身ではなく、ソースの立て方です。
どこの媒体に所属する記者なのか。現場にいたのか、動画を見ただけなのか。イベント取材の経験はどれくらいあるのか。そして、なぜ匿名で語る必要があるのか。
これらは一行も書かれていません。読者がその「自然でしょう」という判断の重みを評価する材料は、ゼロです。記事全体の解釈の重心がここに置かれている以上、ソースの輪郭の不在は致命的です。
当事者三者(MOMOさん側・事務所・JINS)への取材跡がない
「態度悪い」「不機嫌」と評されている当人、MOMOさんへのコメント取材はありません。所属事務所(JYPエンタテインメント)への問い合わせもありません。イベント主催側であるJINSへの確認もありません。
特にJINSへの取材は、記事の構造上、本来は不可欠なはずです。
批判の対象になっている「パネルの持ち方」は、運営側が事前にどこまで段取りを共有していたかで意味が180度変わるからです。段取りが伝わっていれば「対応の問題」、伝わっていなければ「運営の問題」。記事自体も「立ち位置が伝わっていなかった可能性」と書いていますが、それを確認できる唯一の相手であるJINSには、問い合わせた跡がありません。
「可能性」を提示するだけで、その可能性を確かめるための行動がこの記事からは見えません。
「擁護の声も多いワケ」という見出しが、本文では完結しない
見出しは「"態度悪い"と波紋も…擁護の声も多いワケ」と、両論併記の体裁を取っています。「ワケ」(=理由)があると示唆されることで、読者は「読めば理由がわかる」と期待して記事を開きます。
本文を読み終えて確認できる「擁護のワケ」は、引用された3件の擁護ツイートと、「あるWEBメディア記者」一人のコメントです。前者は声の存在の例示にすぎず、後者は匿名一人の見立てです。
読者が見出しから期待した「擁護される構造的・客観的な理由」(=なぜ擁護のほうが筋が通っているのか)は、本文内では十分に提示されていません。見出しが約束した情報量と、本文が実際に渡す情報量。この二つの差が、本記事の不誠実さの中心にあります。
修正するとすれば
検証可能性を高めるなら、最低限の書き換えとして次のような方向が考えられます。
- 「波紋」と書くなら、引用元の投稿が確認できる範囲で、総数と批判・擁護の比率を併記する
- 「あるWEBメディア記者」のコメントを使うなら、媒体名と、現場取材の有無を明記する。それが難しい場合は、その匿名性が必要な理由(取材源保護など)を記事内で説明する
- JINSと所属事務所への問い合わせ結果を本文中に書く。回答が得られなかった場合は「期日までに回答はなかった」と明記する
- 「ワケ」を見出しに置くなら、本文の中で擁護される構造的な理由(現場の段取り上の制約、フォトコール演出の責任の所在など)を一つ以上、具体的に提示する
まとめ
記事は「ハプニング」「批判」「擁護」「運営の段取り」のどれにも踏み込まず、「動画がバズった瞬間の検索ニーズに、最短で記事の形をしたページを差し出す」という機能だけを果たしています。
これが常態化している芸能ニュースですが、そのコストは記事の中では支払われていません。コストを引き受けているのは、被写体である個人MOMOさんです。「態度悪い」「学生気分」というSNS上の人格評価とともに見出しに乗せられた出来事が、検索結果に残り続けます。本人や事務所がそれに応答する機会は、記事の中では用意されていません。
見逃して良い状態ではないと私たちは考えています。