🌀 登録者が“殺到”してるのに、なぜ“心配”?
AERA Digitalさんの記事タイトル、見てみましょう。
「DOWNTOWN+登録者殺到で逆に不安視される松本人志の『期待値上がりすぎて失敗』の前歴」
登録者が“殺到”してるのに、“逆に不安”?
すごい。わずか一文でジェットコースター。
前半で「盛り上がってる!」と上げ、後半で「でも危ないかも」で落とす。
これ、ニュース記事ではよくある“お約束”構文です。
SmokeOutではこれを「反転見出し(Inverted Framing)」と呼びます。
「上がる」話を「落とす」ことで、ニュースに“物語性”を足す。
「記者は、推測や未検証の主張を事実として提示してはならない。」
💡 「前歴」という魔法のレッテル
「ひろゆき氏は『有料は修羅の道』と指摘」
「岡田斗司夫氏も『感性がズレてるのが分かってフェイドアウトして別の場に行く』と松本の未来を予想している」
「確かに松本に関しては、これまでも期待値が上がりすぎて“失敗”した過去がある。」「確かに松本に関しては、これまでも期待値が上がりすぎて“失敗”した過去がある。」
“前歴”って、不思議な言葉です。
犯罪でもないのに、「またやるんじゃ?」という空気を運んでくる。
そしてその後、過去の番組を時系列で列挙。
「『ごっつええ感じ』が終了した後の打ち切り連発期が最初の低迷期」
「『ものごっつええ感じスペシャル』では視聴率9%台」
「映画『大日本人』『さや侍』『R100』は右肩下がりで黒歴史認定」
「失敗を繰り返す人物」として再構成されていきます。
でも、よく考えてみると——
誰だって「過去に上手くいかなかったこと」くらいある。
それを“前歴”と呼ばれたら、人生の履歴書が真っ黒になってしまう。
「前歴」という一語で、人の歩みを“反復する失敗”にしてしまう。
これも報道のレトリックのひとつなんです。
🎞 「黒歴史」「低迷期」——ドラマの脚本みたいな語彙
「世間からは黒歴史認定されている。」
「ここが2度目の低迷期と言われています。」
この2行だけで、人の人生がドラマの第1章〜第2章みたいに仕立てられてしまう。
分かりやすいけど、ちょっと怖いですよね。
SmokeOutでは、こういう語を「固定化語彙(Fixative Labeling)」と呼びます。
「黒」「低迷」「失敗」といった言葉を置くだけで、“再評価”という未来が閉じてしまうんです。
🧠 “期待値”という記事の燃料
記事のタイトルにも出てきた「期待値」。
この言葉、ほんと便利です。
「常に勝ち続けてきたわけではない松本だが、今回の逆境は過去最大レベルかもしれない。」
「そのぶん期待値もふくらんでおり、成否が注目される。」
上げても、下げても、全部“期待のせい”にできる。
成功したら「期待に応えた」、
失敗したら「期待が高すぎた」。
つまり、どっちに転んでも記事が書ける。
——ちょっとズルいけど、上手い構文です。
「ジャーナリズムは排除ではなく、理解と包摂に寄与すべきである。」
🌱 まとめ:挑戦を「前歴」にしないために
✓ 「前歴」という言葉が、人を“繰り返す失敗”に見せる
✓ 「黒歴史」「低迷期」は、挑戦を“終わった物語”に変える
✓ 「期待」と「不安」は、ニュースをドラマに仕立てる燃料
でも、よく考えてみれば——
挑戦しなければ、失敗なんて存在しない。
新しいことに挑む人だけが、「前歴」と呼ばれるリスクを背負う。
ニュースが語るべきは、“また失敗するかもしれない人”ではなく、“また挑戦している人”の方かもしれません。
SmokeOutは、失敗を恐れず挑む人たちが安心して語られる世界を願っています。