🔥 炎上は事実。だからこそ、次の一手を見よう
松尾さんの「素人はSNSやるな」は、実際に炎上しました。トレンド入り、批判の波、動画は非公開。ここは争いません。
問題はその先です。ある記事は、炎上の熱を使って「芸人には選民意識が残っている」「素人呼びは時代錯誤」と、結論を大きく広げていきました。
本当にそこまで言える材料、揃っていましたか?
📰 何が起きたか
チョコプラ松尾「炎上発言」の本質…いまだ芸人が一般人を「素人」と呼ぶ選民意識と時代錯誤
- 発端:松尾さんがYouTubeで「素人はSNSやるな」と発言。誹謗中傷への苛立ちが前提。
- 反応:SNSで批判が拡散、炎上。
- 記事の運び:批判コメントを拾い、「芸人の選民意識」へ直行。さらに粗品さんの過去発言を並べて“文化論”に拡大。最後は「素人呼びは時代錯誤」で締め。
ここからが本題。拡大の仕方を点検します。
「炎上発言」→発言の全部が“悪”になる早回し
見出しに「炎上発言の本質」と置いた瞬間、読者は中身を問う前から“有罪”で読み始めます。
批判の声を伝えることは必要ですが、中身を切り取って“炎上=発言の本質”に短絡すると、議論が浅くなります。
- 最低限ほしいのは、どの部分が、どの論点で燃えたのかの分解。
- SPJ Code of Ethics – Accuracy
正確性の観点でも、範囲と根拠を添えるのが筋です。(単なる「炎上した」ではなく、どの規模・どう拡散したかの手がかり)
👉 要するに、「燃えた」事実を起点に、何が燃料だったかまで書いてほしい、という話です。
「素人=選民意識」への一直線——感情語を主柱にしない
記事はSNSの《気色悪い》など強い言葉を主柱にして、「素人呼ばわり=選民意識」を一気に結論化しました。
ここで失われたのは、発言の文脈と言葉の使い分けです。松尾さんが止めたいのは誹謗中傷の拡散で、その苛立ちが乱暴な言い回しを生んだ。そこをまるごと「見下し文化」に接続すると、議論が“人間関係の善悪”に溶けてしまう。
- IFJ Global Charter of Ethics
:「蔑称の拡散を避けよ」と明記。SNSの強語をそのまま見出しに格上げする時にも効いてきます。
ここは「表現の粗さ」と「差別的意図」を切り分ける書き方がほしいところ。
粗品カードで“文化”にジャンプ——直列配線の雑さ
次の段。記事は粗品さんの過去発言を持ち出します。「YouTuberは一般人やんけ」的な辛口に触れて、松尾さんの話と直列配線。
これで読者の頭に「芸人=一般人を素人扱いする文化」という看板が立つ。便利です。けれど論理は粗い。
文脈が違う発言を同列に並べるのは、UNESCO Handbook – Journalism, ‘Fake News’ & Disinformationが戒める「誤った代表化」。
手口はこうです:
1. 個人の発言A(松尾)
2. 個人の発言B(粗品)
3. A+B=文化、という性急な一般化
“文化批判”に行くなら、複数の時期・複数の現場・複数の言い方の蓄積が必要です。一例+一例は、まだ「傾向」ではありません。
👉 たった二つのパーツで、説明しきるのは無理があります。
「時代錯誤」まで一気に——ゴールを先に決めない
最後に「素人呼び文化は時代錯誤」と断じたところで、記事はきれいに着地します。読み味は良い。けれど、そこまでの踏み石が足りない。
- 📌 Ethical Journalism Network – Five Core Principles
「正確・公平・誠実」を求めています。
- 例えば:
- “素人”という語の歴史的用法(芸能文脈での俗用)
- SNS時代に語感が変化している事実
- “誹謗中傷”対策としての規範整備(表現の自由とプラットフォーム運用)
これらを踏まえれば、「言葉のアップデート」が主題になり、“芸人文化=時代錯誤”という総括の誘惑から離れられます。
🧐 ここが読みたい:炎上の『中身』
この記事が強くなるポイントは単純です。
- どの語が引火点だったか(例:「素人」「やるな」「見てりゃいい」)
- どの層が反応したか(ファン、YouTuber層、一般層、業界人)
- 反論側の論点(差別語感、線引き、表現の自由)
- 松尾さん側が本当に言いたかったライン(誹謗中傷の抑制)
👉 火の大きさより火の性質を書けば、読者は「また対立」ではなく「次の解」に進めます。
🪄 リライト選手権:記事が本気で“議論”を作るなら
- 元:チョコプラ松尾「炎上発言」の本質…いまだ芸人が一般人を「素人」と呼ぶ選民意識と時代錯誤
- 案1(事実+論点):「チョコプラ松尾『素人はSNSやるな』発言が炎上 “言葉選び”と“誹謗中傷”どこで線を引く?」
- 案2(比較):「『素人』は死語? SNS時代の呼び方を考える——松尾発言とネットの反応」
- 案3(構造):「炎上は事実。文化断罪は早計——粗品の事例まで一気に結ぶ前に確認したいこと」
どれも“煽り”より“議論”に重心を置いています。読者は熱の行き場を得ます。
🧯 まとめ:燃えた後に、言葉を整える
炎上は事実。松尾さんの言い方は粗かった。そこははっきり書いていい。
ただし、個人の粗さから芸人文化の時代錯誤へジャンプするなら、踏み石を増やすべきでした。粗品さんを並べるのは簡単だけれど、論理の距離は埋まっていません。
次に必要なのは:
- 誹謗中傷にどう向き合うか(規範・運用・教育)
- “素人”という語をどうアップデートするか(置き換え語、文脈の注記)
- 炎上をどう伝えるか(規模・論点・当事者の意図の分解)
炎上を使って誰かを一気に裁く書き方より、炎上を材料に議論の設計図を示す書き方へ。
SmokeOutは、そちらに賭けます。