11月5日、2026年の「新語・流行語大賞」のノミネート30語が発表されました。週刊女性PRIMEは翌6日、その結果を記事にしています。芸人やテレビ発の言葉がなかった、という内容です。
新語・流行語大賞ノミネートに〈芸人・テレビ発がゼロ〉で浮き彫りになった「お笑い流行ってない」の現実
見出しは「現実」と言い切っています。お笑いが流行っていないことが、事実として示されたように読めます。
では、その「現実」は何を根拠にしているのでしょうか。ネットの声は何件か。解説しているのは誰か。今日はこの三つを、本文の言葉で確かめていきます。
「嘆く声が多く上がっている」は何件か
記事は、Xの反応をこう伝えています。
ダウ90000蓮見翔がバラエティー番組で発したキラーフレーズ「お笑い流行ってない」を引用し、嘆く声が多く上がっている。
この直前に紹介されている投稿は、2件です。一つは、次の短い一文でした。
《お笑い流行ってないなぁ》
2件の投稿から「多く上がっている」とまとめる。これは急速な一般化です。急速な一般化——少ない例から、全体がそうだと語る書き方のことです。
しかも、もう1件の投稿は、お笑いだけを嘆いたものではありません。バラエティーやドラマも入らなかったことへの感想です。2件の中身も、記事のまとめとは少しずれています。
ノミネートがないことは「流行っていない」ことか
記事は最後に、こう結論づけています。
お笑いどころか、テレビすら流行っていないのが浮き彫りになってしまった今年の新語・流行語大賞。
流行語大賞のノミネートは、選考によって選ばれる30語です。そこに入らなかったことは、流行っていないことと同じではありません。
記事自身も、エンタメ界から選ばれた言葉を紹介しています。
TikTokを中心に大バズりしたM!LKの楽曲「好きすぎて滅!」が選ばれた
音楽や漫画の言葉は入っていました。入らなかったのは、芸人とテレビ番組の言葉です。その一部の結果から、「テレビすら」と範囲を広げて語っています。
本文の中には、選ばれない理由の手がかりもあります。
「現在TBS系で放送中の『VIVANT』関連は2023年にノミネートされているから選出されなかったとはいえ
話題の番組でも、過去に選ばれていれば入らない。選ばれない理由は、人気の有無だけではないのです。それでも記事は、ノミネートがないことを証拠にしました。結論は「テレビすら流行っていない」です。
これは論理の飛躍です。論理の飛躍——ある事実から、言えない結論まで一気に進む書き方のことです。見出しの「現実」も、この飛躍の上に立っています。
「テレビ誌編集者」「お笑いライター」は誰か
記事の解説部分は、二人の声で組み立てられています。
しかし現在は経費削減の影響もありスタジオのトーク番組が主流の上、SNSの定着によりギャグを含めた流行が消費されるスピードが早まっています。
この言葉の主は「お笑いライター」とされています。もう一人は「テレビ誌編集者」です。どちらも名前や所属は書かれていません。
二人の話は、もっともらしく聞こえます。番組の作り方の変化や、SNSの速さ。どれも、ありそうな説明です。けれど、ありそうな説明であることと、確かめられた事実であることは別のものです。
肩書が添えられている分、まったくの匿名よりは手がかりがあります。ただ、読者が発言の確かさを確かめる方法はありません。背景の説明が、名前のない二人の見立てだけで支えられているのです。
本文には、芸人本人の使い方についての記述もあります。「本人が言う機会はそう多くない」という一文です。これも、何を根拠にした観察なのかは示されていません。
写真リンクの「デート現場」
記事の冒頭近くには、一本の写真リンクがあります。
【写真】お笑いは流行ってないけどモテる? ダウ9000蓮見翔のデート現場
流行語の記事に、言葉の発信者のデート現場が添えられています。記事の主題は言葉と番組の話でした。私生活の場面は、その主題とは別の話題です。
「お笑い流行ってない」という言葉を引用されたうえに、私生活まで入口に使われる。記事の中心にいる人の扱いとして、ここには疑問が残ります。
本文にある確かなもの——ノミネートの事実と過去の例
ここで公平に書いておきます。この記事は、ノミネートの事実と過去の例を具体的に示しています。
2024年にはドラマ『不適切にもほどがある』(TBS系)の略語「ふてほど」が大賞に選ばれている。
昨年のノミネート語や、今年選ばれた言葉も、名前を挙げて紹介されています。どれも公式の発表で確かめられる情報です。読者が自分で比べられる材料は、きちんと置かれています。
だからこそ、結論の部分が目立ちます。確かめられる事実の上に、確かめられない声と大きな結論が重ねられているからです。
SmokeOut視点:「ゼロ」という事実と、「現実」という言葉
芸人やテレビ発の言葉がノミネートにゼロだった。これは確かめられる事実です。ニュースとして十分に意味があります。
けれど、そこから「お笑い流行ってない」の「現実」へ進むには、別の根拠が必要です。視聴の数字や、番組の動向など。この記事では、その間を2件の投稿と名前のない二人の声が埋めています。
ゼロだったと書くところで止めて、理由はいくつかの見方として並べる。それだけで、読者は事実と見立てを分けて受け取れます。
まとめ:「現実」の根拠を数える
- ✓ 「嘆く声が多く上がっている」を支える投稿は、本文に何件載っていますか?
- ✓ ノミネートがないことは、流行っていないことと同じですか?
- ✓ 背景を解説しているのは、名前の分かる人ですか?
ノミネートの事実と過去の例を、具体的に伝えた記事でした。煙は二か所から立っています。2件の投稿を「多く」とした部分と、ゼロを「現実」と結んだ結論です。見出しの「現実」の根拠を一つずつ数えてみる。それだけで、記事の言葉の重さを自分で測れます。