10月24日、都内で女性の働き方や生き方をテーマにしたイベントが開かれました。モデル・タレントのダレノガレ明美さんも、セッションに登壇しています。オリコンはその夜、イベント後の取材をもとにした記事を配信しました。
ダレノガレ明美、36歳の現在は「結婚願望もない」 思い描いた“3児の母”とは違う人生
見出しに並ぶのは、「36歳」「結婚願望もない」「3児の母とは違う人生」です。読むと、思い通りにいかなかった人生を語った記事のように感じます。
けれど本文の最後には、まったく別の言葉が置かれていました。今日は、見出しが選んだ言葉と、選ばなかった言葉を比べていきます。
「違う人生」は、誰が決めた枠か
本文を読むと、「3児の母」は本人が語った10代の頃の想像です。
取材に応じたダレノガレ。36歳となった現在について10代の頃に思い描いていた人生とは「全然違います」と告白。
ダレノガレさんは、10代の想像と今が「全然違う」と話しました。違うのは結婚や子どものことだけではありません。本人は、仕事についてもこう語っています。
ビジネスをしたいとは思っていましたけど、やっているとは思ってもなかった
想像と違ったのは、仕事の面でも同じでした。つまり本人の話は、「人生は予想と違う形になった」という全体の振り返りです。
ところが見出しは、その中から「結婚」と「3児の母」だけを取り出しています。しかも「36歳」と年齢を添えています。すると記事は、ある年齢までに結婚し、子どもを持つ人生を基準に語る形になります。
これは枠組みによる印象づけです。見出しが物差しを先に決めると、どうなるか。読者は、その物差しで本人を見てしまいます。
「告白」と呼ばれた、ふつうの答え
先ほどの引用には、「告白」という言葉がありました。けれど、本人が話した内容は「全然違います」という短い答えです。
もう1人もいないし、結婚願望もないし。全然違いますよ
記事も「率直に語った」と書いているとおり、明るく率直な答えです。隠していたことを打ち明ける「告白」の重さは、本人の言葉からは感じられません。
「告白」の一語が入ると、見え方が変わります。結婚していないことが、打ち明けにくい事情のように見えてくるのです。言葉を少し重くするだけで、話の温度は変わるのです。
そしてこの話題は、イベントの本題とは別の取材で出たものです。
イベント後、オリコンニュースの取材に、現在は「結婚願望もない」と明かした。
記事は、どんな質問をしてこの答えが出たのかを書いていません。本人が自分から結婚の話を始めたのか。それとも聞かれて答えたのか。読者には分かりません。話題を選んだのが誰なのかは、見出しの重さにも関わります。
見出しが選ばなかった「最終的な夢」
本文の終わりで、ダレノガレさんは将来の夢を語っています。
子どもが好きなので、その子たちのために施設みたいなものを作りたい
そして記事は、こうまとめています。
最後には「最終的な夢はそっちですね」と語り、結婚や出産という形だけにとらわれず、子どもたちと関わり、支える場所を作ることを将来の目標に掲げた。
このまとめは、とても丁寧です。結婚や出産という「形」にとらわれない生き方を、記事自身がきちんと書いています。本人の話の中心は、ここにありました。
今の暮らしについても、本人は明るく語っています。
仕事をして、ボランティアをして、家で猫と一緒に暮らしたい
仕事、ボランティア、猫との暮らし。本人が描く今と未来は、具体的で前向きです。「違う人生」という言葉から想像するものとは、ずいぶん温度が違います。
見出しは、この「最終的な夢」には触れていません。選ばれたのは「結婚願望もない」と「3児の母とは違う」でした。本文が結論として置いた言葉と、見出しが選んだ言葉が、逆向きになっています。
イベントのセッションの題名も、本文に書かれています。
仕事もプライベートも“私らしく”。ブレない軸で選ぶ『ワークライフバランス』
「私らしく」を語る場に登壇した人を、「思い描いた人生と違う」と見出しにする。そこにも、小さなずれがあります。
写真案内が添える、もう一つの物差し
記事の冒頭近くには、写真記事への案内があります。
【全身写真】スタイル抜群!ミニワンピを着こなすダレノガレ明美
働き方や生き方を語った記事に、体型をほめる一行が添えられています。ほめ言葉であっても、見た目で人を語る物差しです。見出しの「年齢と結婚」に、「スタイル」という物差しが重なっています。
本人がイベントで語ったのは、仕事と生き方の話でした。記事の入り口に並ぶ物差しは、その話とは別のところにあります。
SmokeOut視点:本文の結論を、見出しにも
年齢や結婚の話題は、読者の関心を集めやすいものです。だからこそ、見出しに選ばれやすいのでしょう。それ自体を責めるつもりはありません。
ただ、この記事は本文で、本人の考えを丁寧に伝えていました。結婚や出産の「形」にとらわれず、子どもたちを支える場所を作りたい。その結論を見出しに置けば、記事の温度はまったく違ったはずです。
たとえば「ダレノガレ明美、最終的な夢は子どもを支える施設」。同じ本文から、こんな見出しも作れたはずです。本人が語った中で、本人がいちばん大切にしている言葉を選ぶ。それも、取材した側にできる配慮ではないでしょうか。
見出しは、記事の顔です。本文がたどり着いた結論を、顔にも映す。それだけで、読者は本人の言葉の中心に、まっすぐたどり着けます。
まとめ:見出しの物差しを確かめる
- ✓ 見出しは、どんな物差しでその人を語っていますか?
- ✓ 「告白」と呼ばれた言葉は、本当に打ち明け話でしたか?
- ✓ 本文の最後に置かれた結論は、見出しに入っていますか?
本人の言葉と夢を丁寧に伝えた記事でした。煙は、その夢を見出しから外したところから立っています。本文の最後まで読めば、その人が本当に語りたかったことが見えてきます。