10月2日、久保建英選手と福原遥さんが結婚を発表しました。サッカー日本代表の選手と、俳優の二人です。それぞれのインスタグラムに、連名の文書を投稿する形でした。スポーツ報知は同じ日の夜、記事を配信しています。
Yahoo!ニュースのトピックスに並んだ見出しは、こうでした。
久保建英&福原遥 結婚を電撃発表
元の記事の見出しは、次の通りです。
久保建英&福原遥、結婚を電撃発表 「笑顔あふれる温かい家庭を」交際報道一切なしでゴールイン【コメント全文】
おめでたい発表です。本人たちの文書は、感謝と家庭の話だけでした。しかし記事には、文書にない言葉が二つ入っています。「電撃」と、「妊娠しておらず」。
今回は、この二つの言葉がどこから来たのかを確かめます。
「電撃」の主語は誰か
記事は「電撃」を、見出しと本文で三度使っています。その理由は、本文に書かれています。
2人の交際が報じられたことはなく、まさに電撃のゴールインとなった。
交際が報じられたことはなかった。だから電撃だ、と。この論理をたどると、驚いたのは誰かが見えてきます。報じる側です。メディアが把握していなかったから、電撃に見えた。
本人たちにとっては、違う時間が流れていたはずです。記事自身が、こう書いています。
ビッグカップルが静かに愛を育み、ゴールインしていた。
「静かに愛を育み」。この一文は、誰が見たのでしょうか。交際が報じられなかった以上、記者はその過程を見ていません。本人たちの文書にも、交際の経緯は書かれていません。これは、記事が描いた物語です。
悪意のある言葉ではありません。むしろ祝福の言葉です。ただ、見ていない過程を事実の文体で書くと、読者はそれを事実として受け取ります。「電撃」は記者の驚き、「静かに愛を育み」は記者の想像。どちらも、本人たちの言葉ではありません。
「関係者によると、福原は妊娠しておらず」——本人が言っていないこと
記事の冒頭、二文目にこうあります。
サッカー日本代表MF久保建英(25)=Rソシエダード=と、女優の福原遥(28)が2日、それぞれのインスタグラムを通じ、結婚したことを電撃発表した。関係者によると、福原は妊娠しておらず、変わらず日本で仕事を続けていく。
本人たちの文書に、妊娠の話はありません。それでも記事は、二文目でその有無に触れています。根拠は「関係者によると」。誰なのか、何人なのかは書かれていません。
ここで立ち止まりたいのは、二つのことです。
一つ目。「妊娠していない」と書くこと。それは、「妊娠しているのか」という問いを立てることと同じです。本人たちが触れていない問いを、記事が先回りして立て、匿名の答えで閉じています。
二つ目。問われているのは、福原さんの側だけです。結婚は二人の発表でしたが、身体に関わる情報が書かれているのは一人です。これは、この記事に限らず、結婚報道の型に根づいた非対称です。
SmokeOutは、この情報が誤りだとは考えません。取材があったものとして読みます。ただ、本人が公表していない身体の情報です。それを匿名の情報源で載せることに、どれだけの公益性があるのか。その問いは残ります。
小さな点を加えます。同じ発表を伝えたFOOTBALL ZONEの記事も見てみました。そこでは、こう書かれています。
福原さんは仕事を継続し、妊娠はしていない。
出どころのない、ただの事実の形です。匿名の関係者の言葉は、媒体を渡るうちに、ただの事実に変わります。煙は、そうやって濃くなっていきます。
本人の言葉は、全文で読める
この記事の良いところは、はっきりしています。コメントの全文が載っていることです。
お互い幼い頃からたくさんの方の支えがあって今があります。まだまだ未熟な私たちですが、皆様への感謝の気持ちを忘れることなく、共に助け合い、笑顔あふれる温かい家庭を築いていきたいと思っております。
情報源は本人たちのインスタグラムで、記事はそれを明記しています。二人の経歴も、年月日と作品名、所属クラブで淡々と書かれています。土台は確かです。
見出しの「笑顔あふれる温かい家庭を」も、全文の中にそのままあります。見出しの引用が本文で確かめられる。当たり前のようでいて、守られないことも多い点です。
本文の引用と全文の間に、小さな差があります。本文では「沢山の方」、全文では「たくさんの方」。どちらが原文なのかは、記事からは分かりません。意味は同じです。ただ、全文を載せる記事だからこそ、本文の引用も揃えてほしいところです。
もう一つ、写真への案内文です。
【写真】福原遥「彼女感」ショット!休日にコストコで大はしゃぎ!
「彼女感」「大はしゃぎ」。結婚の発表に、別の場面の写真を「彼女感」という言葉で結びつけています。これも記事側の温度です。本人の言葉とは、別の層にあります。
SmokeOut視点:結婚報道の軸は、誰の都合で決まるか
結婚の記事には、決まった軸があります。交際報道があったか。電撃か。妊娠はしているか。相手は誰か。どれも、読者が知りたいとされてきた問いです。ただ、その「知りたい」を決めてきたのも、報じる側です。
しかし、その軸はすべて報じる側の都合で立っています。「交際報道なし」は、メディアが知らなかったという話です。「妊娠の有無」は、メディアが毎回問うから答えが用意される話です。本人たちの文書には、どちらもありません。あるのは、感謝と、これから築く家庭の話だけです。
記事は全文を載せてくれました。だから読者は、記事の軸と本人の言葉を、分けて読むことができます。それが、この記事の救いです。
まとめ:本人が言っていないことを、見分ける
- ✓ 「電撃」と感じたのは、本人ですか、報じる側ですか?
- ✓ 本人の文書にない情報は、誰の言葉として書かれていますか?
- ✓ 身体に関わる情報は、二人のうちどちらについてだけ書かれていますか?
祝福の記事です。だからこそ、本人が言っていないことが混ざると、見えにくくなります。全文は、記事の中にあります。「電撃」も「妊娠」もない、二人の言葉です。まずはそこから読んでみませんか。