サマリー
- 元記事は「日本アーティスト初の快挙を成し遂げた&TEAMに学ぶ、日本の音楽の世界への道」(徳力基彦氏 / Yahoo!ニュース)
- SmokeOutは普段「モヤモヤする記事」を分析しているが、今回は逆です。まさに「こういう記事が増えてほしい」というお手本。
- 主役は「すごい快挙!」ではなく、&TEAMとHYBEがどうやって “Japan to Global” を形にしているかという 「仕組み」。
- ミリオン枚数・受賞歴・チャート名・プラットフォーム名など、具体的なデータで支えられていて、「なんとなくの持ち上げ」に頼っていない。
- ファンの不安や炎上を煽る要素はゼロ。「他の日本アーティストがどう学べるか」という建設的な視点で締めている。
- 「快挙」を語りながら、誰かを落とさず、ファンを煽らず、仕組みで説明する——「推し記事」の理想形
🌙 このコラムが“煙たくない”いちばんの理由
一言でいうと、「“どうしてそうなったか”をちゃんと説明しようとしているから」です。
ありがちな「快挙!」「世界が熱狂!」だけで終わる記事とは違って、このコラムはちゃんと三段構成になっています。
- 何が起きたのか
- 日本&韓国でのミリオン達成
- 日本レコード大賞 特別国際音楽賞
- Billboard「Emerging Artists」1位
- Forbes の評価 …など
- どういう背景があるのか
- HYBE LABELS チャンネルでのMV公開
- Weverse というグローバルファンプラットフォーム
- オーディション番組『&AUDITION - The Howling -』の存在
- グループ間で相乗効果を生む戦略
- そこから何が学べるのか
- 「Japan to Global」を前提にしたデビュー設計の重要性
- 事務所横断ではなく「事務所内・グループ横断」の相乗効果
- 世界を目指す他の日本アーティスト・事務所へのヒント
「すごい」「勢いがある」という形容詞でごまかさず、
- 枚数:初週 122万枚(韓国 1st ミニアルバム)
- HYBE LABELS の登録者:約 7,900 万
- Weverse の累計ダウンロード数:1.5 億超
といった数字で支えているので、読者が「本当にすごいの?」と疑ったときに、自分で判断し直せる余白がちゃんと残っています。
🔍 「主観」と「事実」の線引きが丁寧
このコラムは徳力基彦さんの署名付きコラムなので、ある程度の主観は当然含まれます。
それでも、「どこまでが事実で、どこからが筆者の見解か」の線引きは比較的クリアです。
事実として置かれているもの
- &TEAM の構成:日本人7・台湾人1・韓国人1
- 日韓ミリオンの実績:日本:レコード協会のミリオン認定、韓国:Hanteoで初週 122万枚
- 日本での活動量:TV出演 300 本以上(2024 年)
- 受賞・評価:
- 日本レコード大賞 特別国際音楽賞
- 紅白歌合戦 初出場決定
- Billboard「Emerging Artists」1位
- Forbes による評価
- HYBE の仕組み:
- HYBE LABELS チャンネルに各グループのMVを集約
- Weverse という共通ファンプラットフォーム
これらは、公式発表やチャート、公開情報で誰でも検証できるデータに寄せて書かれています。
意見・解釈としてマークされているもの
「今年最も勢いのあるグループの一つと言えるでしょう」
「印象的でした」「象徴的なのは〜」
「非常に大きいと言えます」
こうした部分には、きちんと
「〜と言えるでしょう」
「〜のように思えます」
といった緩衝材が入っていて、筆者の視点であることが分かる書き方になっています。
誰かの「心の中」や「裏事情」を勝手に言い切ることもなく、「分かっている範囲」だけで話そうとしているのが、誠実さにつながっています。
🌐 「ファンの力」を使うけれど、煽らない
今回のテーマで簡単に記事にできそうな書き方としては、例えば
- 「ファンカムが世界中でバズる!」
- 「SNS戦略がエグい!」
といった煽り一辺倒の記事です。
でも、このコラムはそのあたりもかなり落ち着いています。
&TEAMのSHOW CASEにおいては、逆にファンに、まだ&TEAMを知らない世界の人たちに観てもらえるようにと、SNSへの投稿も推奨していたのが非常に印象的でした。
SHOW CASE でファンにも撮影を許可し、「まだ&TEAMを知らない世界の人たちに観てもらえるように」とSNS 投稿を推奨していたという事実を紹介した上で、
実際に筆者が撮影した動画にも海外のファンからのコメントが複数ついており、こうしたファンカムと呼ばれるファンが撮影した映像が、海外のファンからも求められていることが良く分かります。
海外ファンからコメントがついていて、ファンカムが求められていることが分かると説明するにとどめています。
ここでも、
- 「だからあなたも今すぐ真似しろ」
- 「これをやらない事務所は時代遅れ」
とは言っていません。
「仕組みとしてこういう効果が出ている」という説明で止めることで、ファンに過剰な「義務感」を背負わせないバランス感があります。
⚙️ 良い意味で“ビジネス寄り”の視点
もうひとつ、このコラムが読みやすい理由は、ファンに“煽り”を投げる記事ではなく、業界側に“学び”を投げる記事になっていることです。
ラスト近くのパートでは、
- 日本の音楽事務所
- 海外進出を目指すアーティスト
への提言に矢印が向いています。
当然、HYBE以外の日本アーティストは、こうしたHYBEならではのアプローチ全てを簡単に真似できるわけではありません。
ただ、日本を中心に活動していても、デビュー直後から海外を意識した活動を地道に続けていくことによって、着実に海外のファンを増やすことができることを、今回&TEAMがその実績を持って証明してくれたことは非常に大きいと言えます。
- 事務所側・仕組み側がどう変われるか
- 日本の音楽産業全体がどう広がり得るか
という方向で話を閉じているのも、SmokeOut的にはかなり健全です。
📝 まとめ:こういう「エンタメ記事」が増えてほしい
このコラムは、
- 誰かを落として主役を持ち上げる
- ファンに不安や罪悪感を植え付けて動かそうとする
- 匿名の「関係者」や、ぼんやりした「世間の声」で煽る
といった手法に頼らずに、
- 何が起きているのか
- どういう仕組みで広がっているのか
- そこから何を学べるのか
を、淡々と、でもきちんと熱量を持って書いています。
「推しの快挙」を語るときに、誰かの不安やコンプレックスを燃料にしなくてもいい——
そのことを、今回の&TEAM記事は静かに強く示してくれているように感じます。