10月14日、Snow Manの目黒蓮さんが大阪城に登壇しました。プロジェクションマッピングの点灯式です。ドラマ撮影でカナダに滞在していた目黒さんにとって、帰国後初の公の場です。オリコンは同じ日の夜、その様子を記事にしました。
有名人がイベントに登場する記事は、毎日のように配信されます。そして、たいてい一つのことが書かれていません。「なぜその人が、そこにいるのか」です。主催者と出演者の関係は、読者には見えないまま、発言だけが流れていきます。
この記事は、そこを書いていました。読み終えて、煙がほとんど立っていない記事だと感じました。
- 目黒さんが登壇した理由が、主催との関係まで含めて書かれている
- 事業の名前、主催に関わる企業、同席した市長の名前が具体的
- 発言は点灯式という場面つきで、そのまま引かれている
- 帰国の理由(ドラマ撮影でのカナダ滞在)も明記されている
- 「ただいま」は本人の言葉で、記事が盛っていない
- 記事の温度語は「激変」と写真案内の一行だけにとどまる
この記事が「煙たくない」理由——「なぜそこにいるのか」が書いてある
記事の後半に、こういう段落があります。
日本・イタリア国交160周年記念事業で行われた同プロジェクト。イタリアを代表するハイジュエラー・ブルガリが実行委員会の一員として参画する縁から、ブルガリアンバサダーを務める目黒が特別ゲストとして登壇することが決定した。
事業の名前。実行委員会に入っている企業の名前。その企業のアンバサダーだから、目黒さんが登壇した。この三段がつながっています。読者には、この登壇が記念事業の一部だと分かります。同時に、企業との関係に基づくものだとも分かります。
SmokeOutが日々見ているイベント記事では、ここが省かれがちです。「イベントに登場した」で始まり、発言が続き、終わる。出演の背景にある関係は書かれません。この記事は、その関係を隠していません。隠さないことが、読者の判断を助けます。
登壇の場面も具体的です。「大阪城を背に横山英幸大阪市長らと登壇し点灯式に臨んだ」。誰と、どこで、何の式に出たか。発言の前に、場面が置かれています。
「主観」と「事実」の線引き——「ただいま」は本人の言葉で
記事が事実として置いているのは、次のような情報です。
- 10月14日に大阪城本丸で点灯式が行われた
- 目黒さんはブルガリのアンバサダーで、特別ゲストとして登壇した
- ドラマ撮影でカナダに滞在し、帰国後初の国内イベントだった
- 大阪は今年1月にドームツアーの最終公演を行った場所だった
どれも確かめられる事実です。一方で、気持ちの部分は、本人の言葉として引かれています。
なので、ちょっとこれだけ言わせてください。ただいま
見出しの「ただいま」は、この発言そのままです。記事は「感動の帰国」「待望の復帰」のような言葉を足していません。「笑顔で話した」という描写だけが添えられています。
マッピングの感想も、本人の言葉です。「めちゃくちゃ感動しました」は目黒さんが言ったこと。記事が「感動的だった」と書いたのではありません。この線が守られています。
もう一つの美点——帰国の理由と、大阪のつながりを事実で書く
「帰国後初」という見出しの言葉には、説明がついています。
ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』シーズン2の撮影のため滞在していたカナダから帰国した目黒にとって、帰国後初の国内のイベント登壇となる。
なぜ海外にいたのか。何のための滞在だったのか。読者が知らなくても分かるように、一文で説明されています。「帰国後初」だけを見出しに置いて、理由を書かない記事もあります。この記事はそうしていません。
大阪とのつながりも同じです。今年1月のツアー最終公演の場所であり、渡航前の最後のグループ活動の場所だった。記事はこれを事実として並べています。「運命の地」「特別な場所」のような意味づけはしていません。意味づけは、読者に任されています。
残る薄い煙——「激変」と写真案内
記事の言葉が顔を出している箇所は、二つです。
プロジェクションマッピングでは大阪城にさまざまな映像が上映され、色鮮やかな姿に激変。
「激変」は、記事の評価です。映像が映ったことは事実ですが、どれほど変わったかは見る人によります。「映し出された」で足りる場面に、温度のある言葉が選ばれました。
もう一つは写真の案内です。「黒スーツが似合いすぎる!」。本人の容姿への感想で、記事の文体というより告知の文体です。小さな箇所ですが、本人の言葉ではないことは覚えておきたい点です。
どちらも軽い煙です。記事の本体には、推測も匿名の情報源もありません。
SmokeOut視点:宣伝と報道の境目に、一段落を置く
企業が関わるイベントに有名人が登場する。それ自体は、どこにでもある光景です。問題は、記事がその関係を書くかどうかです。書かなければ、読者は発言だけを受け取り、背景を知らないまま感想を共有します。
この記事は、一段落でその背景を書きました。長い説明ではありません。事業の名前と、企業の名前と、関係の一言。それだけで、読者は「これはこういう場だ」と理解したうえで発言を読めます。
SmokeOutが煙を見るのは、たいてい「書かれていないこと」の中です。この記事には、書かれていないことが少なかった。それが、煙の薄さの理由です。
まとめ:出演の背景を書く記事を
- ✓ その人がイベントにいる理由は、記事に書かれていますか?
- ✓ 「感動」「待望」は、本人の言葉ですか、記事の言葉ですか?
- ✓ 場所や日付のつながりに、記事が意味づけを足していませんか?
企業が関わるイベントの記事は、宣伝と報道の境目に立っています。この記事は、その境目を読者に見せました。誰が、なぜ、そこにいたのか。それを書くだけで、イベント記事はずっと信頼できるものになります。