10月18日、日本テレビの森圭介アナウンサーがインスタグラムを更新しました。社労士試験に合格したという報告です。スポニチアネックスは同じ日の夜、その記事を配信しています。
日テレ森圭介アナ、難関国家試験の合格を報告 「素朴な疑問がスタート地点」祝福続々
見出しの最後は「祝福続々」です。お祝いの声が次々に届いている。そんな光景が浮かびます。
では、本文にはどんな声が載っているのでしょうか。数えてみると、三つでした。そして三つのうち、はっきりお祝いと読める言葉は多くありません。今日は、その三つを一つずつ読んでいきます。
「祝福続々」の中身は三つの声
本文で、コメントについて書かれているのはこの一文だけです。
この投稿には「なかなか理解出来ないのでわかりやすく説明して欲しいです」「行動力と、いろいろなことに挑戦される姿勢にいつも刺激をいただいております」「仕事と勉強の両立の仕方教えていただきたい」など多くのコメントが集まった。
一つ目は「わかりやすく説明して欲しい」。これはお願いです。二つ目は「刺激をいただいております」。これは敬意や感謝に近い言葉です。三つ目は「両立の仕方教えていただきたい」。これは質問です。
「おめでとう」という言葉は、三つのどれにも入っていません。三つの声を「祝福」の一語でまとめ、さらに「続々」を足す。これが見出しの作り方です。
二つ目の言葉は、確かに森アナをたたえています。ただ、向けられているのは合格そのものより、挑戦を続ける姿勢です。お祝いというより、応援の言葉に近いものです。
これは急速な一般化です。急速な一般化——少ない例から、全体がそうであるかのように語る書き方のことです。
本文には「多くのコメント」ともあります。ただ、何件なのかは書かれていません。「多く」と「続々」は、数を示さないまま規模だけを大きく見せる言葉です。
本当は何が集まっていたのか
三つの声を並べると、別の共通点が見えてきます。三つのうち二つは、森アナに「教えてほしい」と頼んでいるのです。
これは、森アナ自身が投稿に書いた目標と重なります。
出産、子育て、働き方、病気やケガの備え、住宅、資産運用、老後の資金まで、わかりやすくお伝えできるようにがんばります
本人は「わかりやすく伝えたい」と書きました。読者は「わかりやすく説明して欲しい」と返しました。投稿と反応が、きれいに噛み合っています。
もちろん、投稿にはお祝いの言葉も多く寄せられていたかもしれません。ただ、それは記事からは確かめられません。記事が読者に見せた声は、この三つだけです。
記事の材料の中で、いちばん面白いのはここではないでしょうか。合格を祝う声よりも、知りたいという声が届いていた。「祝福続々」という見出しは、その温度を一般的なお祝いの言葉に置き換えています。
合格率「18%」はどの試験の数字か
記事の冒頭近くには、写真記事への案内が一行入っています。
【写真あり】30歳グラドル「まさかの37点で」「泣きそう」宅建一発合格報告「30万人の合格率18%」
これは森アナの話ではありません。別の人の、宅建の試験の話です。けれども、この記事の中に出てくる合格率の数字は、この「18%」だけです。
見出しには「難関国家試験」とあります。その難しさを示す数字は、社労士試験については本文にありません。代わりに、別の試験の合格率が近くに置かれています。急いで読むと、二つの数字が混ざってしまうかもしれません。
写真案内そのものは、関連記事への入り口として置かれたものでしょう。ただ、置かれた場所は「難関」という見出しのすぐ後です。読者は、近くにある数字を手がかりにしがちです。案内の位置にも、気を配る余地がありました。
社労士試験の合格率は、試験を実施する機関の公表資料で確認する必要があります。記事の中だけでは、「難関」の中身は確かめられません。
本文にある確かなもの——本人の言葉
ここで公平に書いておきます。この記事の土台は、とても確かです。情報源は本人のインスタグラムで、その言葉がそのまま引かれています。
“社会保険料って高くない?”“年金っていくらもらえるの?”という素朴な疑問がスタート地点でしたが、社会保険だけでなく労働法まで、奥が深くてこれがなかなかおもしろい
受験のきっかけは、本人の言葉で説明されています。FP、宅建士に続く挑戦だったことも同じです。入社年や担当番組も具体的です。「関係者によると」のような、出どころの分からない話はありません。
投稿の最後の一言も、記事は拾っています。
知らないことを学ぶって、やっぱり楽しいね
本人の報告を、本人の言葉で伝える。記事の本体は、その点で丁寧です。煙が立っているのは、見出しの最後の四文字と、冒頭の写真案内の周りだけです。
SmokeOut視点:見出しの「反響」は、本文から作る
著名人の報告を伝える記事には、よく「祝福続々」「反響続々」が添えられます。記事に動きが出るからでしょう。ただ、その言葉が本文の声と合っているかは、別の問題です。
今回、本文の声はお祝いより「教えてほしい」に近いものでした。それを見出しにすれば、たとえば「解説してほしい」の声、のようになります。そのほうが、森アナが目指す仕事にも、読者の関心にも近い見出しになったはずです。
反響を書くなら、何件のどんな声かを示す。数が書けないなら、「続々」は使わない。それだけで、見出しの温度は本文とそろいます。三つなら、三つと書けばよいのです。
記事は、本人の報告を正確に届けていました。だからこそ、見出しの最後の四文字まで、同じ正確さで書けたはずです。
まとめ:「続々」を見たら、数えてみる
- ✓ 「祝福続々」の根拠になった声は、本文に何件載っていますか?
- ✓ その声は、本当に「祝福」の言葉ですか?
- ✓ 記事の中の数字は、その人の話の数字ですか?
本人の言葉を丁寧に伝える記事でした。煙は、三つの声を「祝福続々」とまとめた見出しから立っています。「続々」を見たら、まず数えてみる。それだけで、見出しの温度は自分で測れます。