10月3日、King & Princeの髙橋海人さんのソロ活動が伝えられました。名義は「KAITO」です。5日に1stデジタルシングルが配信されるといいます。オリコンは3日の夜、その記事を配信しています。
Yahoo!ニュースのトピックスに並んだ見出しは、こうでした。
キンプリ・髙橋海人 ソロ活動開始
元の記事の見出しは、次の通りです。
King & Prince髙橋海人が「KAITO」としてソロ活動を開始 作詞作曲、アートワーク…1stシングル「swim?」が5日にデジタルリリース
新しい活動の告知です。日付も、配信先も、具体的に書かれています。それでも、読み終えて二つの疑問が残りました。誰が発表したのか。そして、まだ公開されていない曲を、誰が評価したのか。
今回は、告知記事の中にある「事実の層」と「宣伝の層」を分けてみます。
「決定した」——発表したのは誰か
記事の冒頭です。
King & Princeの髙橋海人が、「KAITO」としてソロ活動を始動し、デジタルシングルをリリースすることが決定した。
「決定した」。誰が決め、誰が発表したのかは、この文にありません。記事全体を読んでも、所属事務所やレーベルの名前は出てきません。「発表された」「決定」「公開された」と、主語のない形が続きます。
告知記事では珍しくない書き方です。発表の主体は自明だ、という前提があるのでしょう。ただ、読者の側から見ると、「誰の発表か」は確かめる入口です。「所属事務所が発表した」の一行があるかないかで、記事の重さは変わります。
公平のために書き添えます。この記事は、本人の言葉を取材していないことを隠していません。
1st デジタルシングルリリースにかけた想いやこだわりが本人の口から語られる予定だ。
本人の言葉は、まだない。4日の生配信で語られる予定だ。そう書いています。取材していないことを、取材したように書いていない。ここは正直です。
「名刺代わりの一曲となっている」——誰が、いつ聴いたのか
楽曲について、記事はこう書いています。
楽曲タイトルは「swim?」。作詞作曲、アートワークにMusic Videoと、全てのクリエイティブにKAITO自身が携わっており、ソロアーティスト「KAITO」の人間性が表現された、名刺代わりの一曲となっている。
前半は事実です。タイトル、作詞作曲、アートワークへの関与。後半は評価です。「人間性が表現された」「名刺代わりの一曲となっている」。
記事の配信は3日。曲の配信は5日です。記事の時点で、曲は公開されていません。では、「人間性が表現された」と判断したのは誰でしょうか。記者が事前に聴いたのか。それとも、発表側の説明文をそのまま書いたのか。記事からは分かりません。
「〜となっている」という文末は、事実を述べる形です。評価を事実の形で書くと、読者は検証済みの事実として受け取ります。これは、断定と推測の混在と呼ばれる書き方です。
写真への案内文も見ておきます。
【写真】水にドボーン!独自の感性が爆発している「swim?」のジャケット写真
「独自の感性が爆発している」。ジャケット写真への評価です。こちらは案内文なので、記事の地の文よりは軽い位置にあります。ただ、「独自の感性」という言葉は本文にも繰り返し出てきます。
美術展でアンバサダーとナビゲーターを務め、グローバルブランドアンバサダーを務めるラグジュアリーブランドで自身の描いたアイテムを発売、さらには今年9月には全国7都市8開催で初の個展「不思議なセロル展 created by 髙橋海人」を開催するなど、独自の感性を持つアーティストとして活躍の場を広げている髙橋。
個展の開催、アイテムの発売。これらは事実です。「独自の感性を持つアーティストとして」は評価です。一つの長い文の中で、事実と評価が同じ速度で流れていきます。読者が立ち止まる場所がありません。
日付と場所は、確かめられる形で揃っている
この記事の確かな部分は、具体性です。
- 配信日は5日、Music Videoの公開は同日0時。
- 公式YouTubeチャンネルと公式TikTokが開設された。
- 4日の生配信リレーは、4つのプラットフォームで時刻つき。
同YouTubeチャンネルにはKAITO の世界観が垣間見れるティザー映像が公開されている。
公開されているティザー映像は、読者が自分で見に行けます。日付も時刻も、当日になれば確かめられます。告知記事として、事実の層はしっかり組まれています。
匿名の「関係者」もいません。「ファンからは期待の声」のような、規模の見えない反応もありません。煙が立っているのは、事実の層に混ざった評価の言葉だけです。
SmokeOut視点:告知記事の二つの層
新曲や新番組の告知記事には、決まった型があります。発表の内容を伝え、作品の魅力を添え、日程を並べる。その「魅力」の部分は、多くの場合、発表側が用意した言葉です。
型そのものは悪くありません。読者も、告知記事に取材の深さは求めていないでしょう。ただ、発表側の言葉が地の文に溶けると、評価と事実の境目が消えます。「名刺代わりの一曲となっている」と読めば、読者は誰かが聴いて確かめたのだと思います。
境目を残す方法は、簡単です。「所属事務所によると」の一言。あるいは、評価の部分をかぎかっこに入れること。それだけで、読者は「これは発表側の言葉だ」と分かります。この記事には、その一言がありませんでした。
まとめ:「〜となっている」の主語を探す
- ✓ この発表は、誰が、どこで行ったと書かれていますか?
- ✓ 作品への評価は、公開前のものですか。誰が聴いた上での言葉ですか?
- ✓ 事実の文と評価の文は、記事の中で区別できる形になっていますか?
日程の層は確か、評価の層は出どころ不明。告知記事を読むときは、この二層を分けてみる。それだけで、読み方が変わります。曲は5日に公開されます。評価は、そのとき自分の耳で確かめてみませんか。