🔥 “不安”というストーリーのつくり方
「10月29日に発売されたSixTONESのライブ映像作品『YOUNG OLD』。……初週売上はDVDとBlu-rayをあわせて約20万枚と、前作『VVS』の約24万枚を下回った」
「およそ4万枚の減少という数字に、ファンの間ではさまざまな意見が飛び交っている」
記事はこの一文を起点に、“数字の変化=ファンの不安”という物語を描き始めます。
けれど、売上という数字は、発売時期やリリース形態、配信特典など、複数の条件が重なる結果です。
単純な上下で“人気”を測ることはできません。
にもかかわらず、見出しには「売上減」「不安視」「脱落の可能性」という言葉が並びました。
これは、まさに 「因果暗示(Implied Causation)」。
数字そのものではなく、「数字が語る物語」を先に決めてしまう書き方です。
🪞 ファンの“声”は誰のもの?
本文では、
《フェス路線やめろ。がなり曲叫び煽り曲やめろ。アイドルを見せて》
《サングラス本気でやめて欲しい、顔面を拝みに入ってるので》
《女ウケをとるか。男ウケをとるか》
といったSNS投稿を並べています。
しかし、これがどれだけの数だったのか、どんな層の意見なのかは不明。
それでも「一部ファンが不安視」と書かれると、“多数派の感情”に見えてしまいます。
これは 「部分の全体化(Representativeness Bias)」 の構造。
数人の声が「ファン全体の空気」に見えてしまう、ニュース記事でよく起きる現象です。
(参照:SPJ Code of Ethics:
Provide context. Take special care not to misrepresent or oversimplify in promoting, previewing or summarizing a story.)
さらに、本文後半では「作品の購買層の多くは依然として女性ファンだと語る」とありますが、購買データの性別構成は一般に非公開であり、記者の“見立て”を事実のように読ませています。
👓 “女ウケvs男ウケ”という分断の錯覚
記事はこう書きます。
「《女ウケをとるか。男ウケをとるか》」
「女性脱落の可能性」
まるで“どちらかを選ばなければならない”かのような構図ですが、SixTONESの本質はむしろその両極を行き来すること。
ラップも、デスボイスも、ファッションも。
彼らは「アイドルらしさ」と「アーティストらしさ」の間を、遊ぶように、挑むように、往復してきたグループです。
サングラスも、その象徴かもしれません。
“隠す”ためではなく、“見せ方”を実験しているだけ。
“距離”ではなく、新しい表現の余白といえます。
🧠 「売上の上下」を“物語”にしない
記事後半にはこうあります。
「SixTONESは、11月6日、2026年1月から全11都市、50公演を回るアリーナツアーの開催を発表した。これに対し、一部では売上の減少により規模を縮小させたのではないかとの見方も浮上している。」
しかし、その“見方”の出所や根拠は示されていません。
本来、ツアー構成はコンセプトや演出意図によって決まるもので、“数字と規模”を単純に結びつけるのは短絡的です。
むしろ今回は、ファンとの距離を重視した「近い空間」を選んだだけかもしれない。
憶測の形で“原因”を補うことも、記事が“物語”を作る瞬間のひとつです。
ほんの少し数字が動いただけで議論が起きるのは、それだけSixTONESが注目され、語られる存在だから。
本当に人気が下がっていれば、誰も議論などしません。
🗓️【UPDATE|2025年11月10日】本人コメントで明らかになった「アリーナ選択」の意図
8日放送の『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』で、田中樹さんと森本慎太郎さんがツアーについて語りました。
田中さんのコメント:
「アリーナツアーってことに今回結構こだわって」
「周年だからファンの人の近くで、物理的近さも感じてほしい」
「多くのところにまわりたいって思いと、多い公演数を確保できるように」
「本当無理言って公演数めっちゃ増やしたよね?」
「これが上半期でできる最大の規模」
つまり、記事が示唆した「ドーム→アリーナへの縮小」ではなく、最初からアリーナで最大公演数を確保するという戦略だったことが明らかになりました。
「規模縮小」という表現は:
• 客観的事実(50公演という過去最大規模)を無視し
• 本人の意図(物理的近さ・公演数最大化)とも矛盾する
二重の意味で、根拠のない憶測だったと言えます。
むしろ今回のツアーは、“距離を近づけた上での拡大”だったと言えます。
🌈 SixTONESはSixTONES
サングラスの向こうで、彼らはいつだって観客を見ています。
「どうすれば楽しませられるか」「どうすれば新しくなれるか」
その思考の延長線に、今のスタイルがあるだけ。
SixTONESが築いてきたのは、“固定された形”ではなく、“更新され続ける感性”。
未踏を進め ありのまま進め
足りて足りて足りない僕ら